ルート十二面体

同人サークル「ルート十二面体」活動概要

[info]サークル参加予定イベント(2017.08.18更新)

(2017.08.20) コミティア121 【ま17ab】
(2017.09.03) こみっく★トレジャー30 【4号館 ウ09ab】
(2017.10.01) 関西コミティア51 【申込済み】
(2017.11.11) ふたけっと13.5 【申込予定】
(2017.11.23) コミティア122 【申込予定】

【ネタバレ注意】劇場版けいおん!感想【六稿目】

上映開始から一週間を経て、
ネット上でも様々な感想が飛び交っています。
今回は中でも特に秀逸と思われるものを取り上げつつ、
自分なりに掘り下げてみたいと思います。

【以下ネタバレ】



【ここからネタバレ】

あの時きらめいていた光はどこまでもどこまでも眩しくて。「劇場版けいおん!」感想その1 - たまごまごごはん

さわ子から見た、もう一つの空「劇場版けいおん!」感想その2 - たまごまごごはん




何よりまず、読み手をぐいぐい惹きこむ文体の魔力は流石だなと。
ここがいいよね、すごいよねっていう書き手の感動がダイレクトに伝わってきて、
思わず「うんうん」とうなずいてしまう。面と向かって話を聞いている感じ。

加えて切り口の鮮やかさ。中でもクスクス笑いの少女性なんて論点は、
マニアックすぎて思いつきもしませんでした。しかし「その2」で展開される
さわ子についての話は、大いに同調するところですので、
ちょっと自分なりの見解を述べてみようと思います。

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今や現役高校生にまで支持層を広げる「けいおん!」ですが、
ファンの大部分はやはり大学生や社会人といった「かつて高校生だった人たち」ではないでしょうか。
唯たちの青春に、自分たちの青春時代を重ね合わせて、懐かしさを感じる人は多いようです。
そして、さわ子はまさにその「かつて高校生だった人たち」すなわち、
映画を観る「けいおん!」ファンの心理の代弁者として本編に登場します。
ファンはさわ子に感情移入しつつ、さわ子とともに唯たちの成長を見守ることになります。

ここで面白いのが、さわ子が単なる傍観者の位置に留まらずに、
積極的に唯たちとコミュニケーションをとっている、という点です。
TV版と同じく映画でも、さわ子が唯たちに混じってお茶を飲む場面がありましたが、
このときファンはさわ子を通じて擬似的に軽音部のティータイムに参加しているわけです。
卒業の可否を決める会議をめぐっての、さわ子と唯たちの息の合ったやりとりは、
彼女たちのまるで友達どうしのような関係を生き生きと表現していますが、
この「友達どうしのような」という構図が、映画を観るファンと唯たちの間にも当てはめられ、
ファンの唯たちに対する親近感――さながら一緒に高校生活を送ってきたかのような――が形成されます。

続いて、まさかの登場となった、ロンドンでの野外ライブのシーン。
ドライヤーのトラウマを思い出してシールドを挿せずにいる唯の前に、
颯爽とさわ子が現れるという何ともヒロイックな演出は、映画を観るファンに対して、
あたかも窮地に立つHTTに自分たちが手を差し伸べているかのような、心地よい錯覚を与えてくれます。
続いてさわ子が自作の衣装を着せようとするお約束の場面がありますが、
ここにも(一部のコスプレマニアの)ファン心理が如実に反映されているわけです。

しかし忘れてはならないのは、唯たちと「友達どうしのような関係」を築きながらも、
さわ子があくまで教師としての自分の立場をきちんとわきまえていること。
教室でライブをしたいという唯たちの提案に「朝とかどう?」と助言するなど、
どちらかといえば生徒側に肩入れしているのは確かなのですが、だからといって、
今のさわ子はもう生徒たちと一緒になって盛り上がるような真似はしないわけです。
唯たちのライブを応援したい気持ちは多々あれど、あくまで教師としての立場は堅持しなければならない。
「ホームルームまでには終わらせますから(ライブを続けさせてあげてください)!」と
堀込先生に懇願するさわ子の悲痛な叫びに、そのあたりの葛藤がにじみ出ていて、印象的でした。

そしてこの「教師と生徒」という距離感は、ファンである私たちと唯たちの間の、
スクリーンを隔てた距離感にそのまま当てはまるわけです。
青春を全速力で突っ走る唯たちの一挙手一投足を間近で見つめながらも、
自分自身がその中に入って一緒に青春を生きることは、決してできないし、許されない。
できるのはただ「唯たちの青春に、自分たちの青春時代を重ね合わせ」ながら、彼女たちを外から見守ることだけ。
この絶妙な線引きを共有することで、私たちはますますさわ子に感情移入することになります。

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ところで、ここまでの議論を踏まえると、あるシーンが俄然、意味を持ち始めることに気づきます。
教室ライブの終盤、生徒たちに見つかったさわ子が、教室の中へと連れ込まれるシーンです。
堀込先生の説得に成功しても、さわ子は決して教室に入ろうとはしませんでした。
教師であるさわ子には、そして観客である私たちには、中に入ることが許されないからです。
あくまで外から生徒たちの青春を見守る姿勢を貫こうとするさわ子。しかし次の瞬間には、
当の生徒たちによって、否応なしに青春の内側へと引きずり込まれてしまうのです。これをどう考えるか。

答えは簡単です。今まさに青春を生きている本人たちにとっては、中も外もない、ということ。
中とか外とかを気にするのは外にいる人間だけで、青春のただ中にいる生徒たちにしてみれば、
周りの人も物も、一切が青春そのもの。さわ子もまた、彼女たちの青春にとって、かけがえのない存在なのです。
だからこそ、生徒たちは何のためらいもなく、さわ子を教室へ、自分たちの青春の舞台へと招き入れます。
そして、周りの全てを巻き込もうとするこの見境のなさにこそ、青春の原動力があることを熟知しているさわ子は、
うながされるまま、盛り上がる生徒たちの輪の中に入り込むことで、彼女たちの青春を完遂させるのです。
何でもないシーンですが、私には青春を象徴する場面であるように思われました。

風子の提案を受けて用意された色紙もまた、さわ子の存在が生徒たちの青春の一部であったことの証しです。
しかしそれは同時に、「教師と生徒」の距離感を、強く意識させる装置でもあります。
生徒から教師への贈り物、という構図もさることながら、より重要なのは、卒業によって、
生徒たちがもはや生徒ではなくなり、「教師と生徒」という関係それ自体が解消してしまうこと(*)。
「教師と生徒」の関係は、いわば時限つきの関係であり、色紙の贈呈とはすなわち、
この関係を清算するための一つの儀式に他なりません。色紙に綴られる言葉は、生徒としての彼女たちにとって、
先生に残す最後の言葉であり、彼女たちは色紙を書くことで「教師と生徒」の関係に終止符を打つのです。

 *両者のつながりは「恩師と教え子」という関係に変質しつつ維持されますが、
 ここで問題にしている「教師と生徒」の関係は、あくまで在校中の関係です。

いつまでも「教師と生徒」ではいられない。その事実を冷たく突きつけるのも色紙ですが、
いつまでも「教師と生徒」だった頃の思い出を残してくれるのも、また色紙です。
さわ子にとって、生徒たち一人一人が思い思いに駆け抜けた青春は、その一つ一つが、
さわ子自身の青春と同じくらいに、貴重な財産となるに違いありません。
卒業してそれぞれの未来へと羽ばたく生徒たちは、まばゆい光を身にまとって、
さわ子の前に現れた、愛らしい天使だったのではないでしょうか。

***************************************************************************

なんか元記事と関係ない話になってしまった。
本当はキャラクターの心情分析などしたかったのですが、
結局のところ構造分析に終始してしまいました。
どうも自分にはこれしか能がないようです。
というわけで、今回はここまで。

(※他の感想記事はこちらから→劇場版けいおん!感想まとめ)

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テーマ:映像・アニメーション - ジャンル:学問・文化・芸術

  1. 2011/12/11(日) 06:30:37|
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