ルート十二面体

同人サークル「ルート十二面体」活動概要

[info]サークル参加予定イベント(2017.08.18更新)

(2017.08.20) コミティア121 【ま17ab】
(2017.09.03) こみっく★トレジャー30 【4号館 ウ09ab】
(2017.10.01) 関西コミティア51 【申込済み】
(2017.11.11) ふたけっと13.5 【申込予定】
(2017.11.23) コミティア122 【申込予定】

【ネタバレ注意】劇場版けいおん!感想【七稿目】

4回目、5回目を観てきました。
本当に観れば観るほど新しい発見があって、
書くのが追いつかないくらいですが、
どんどん書いて頭の中から追い出さないと、
次の気づきが入る余地がなくなってしまうので、
書いていきます。

【以下ネタバレ】



【ここからネタバレ】

3回目の鑑賞の後に友人(彼自身は4回目の鑑賞)と意見交換をしたのですが、
おかげで一人では見落としていた部分が色々と明らかになってきました。
何より実感したのが、以前にも書いたとおり、とにかく伏線が多い、ということ。
思いつくままに挙げてみても、



・最初に映る集合写真の裏話が、終盤の「天使にふれたよ!」演奏中の回想シーンで明かされたり、
 (旅行前の場面をよく見ると、部室のホワイトボードにも「あずにゃんチョコ」の文字があります)

・唯の部屋の謎の人形が、同じく回想シーンで、唯たちの練習中、梓に見立てられている描写があったり、

・デスデビルごっこ中の唯のシャウト「スカイハイ!」が、ロンドン野外ライブの締めで繰り返されたり、

・唯のイタズラでテープを貼られた梓のハサミが、終盤のコサージュ作りの場面で再登場して純にいじられたり、

・唯が落としたゴミを梓が拾い歩くという図式が、ロンドンのホテルでゴミを飴に置き換えて再現されたり、
 (特に、梓が落し物を拾うためにしゃがみこむカットは、ゴミの時も飴の時も全く同じ構図で描かれています)

・唯がミカンを転がしながら梓のことを憂に尋ねる、という図式が、卒業式前日の卓球の授業中のシーンで、
 梓がピンポン球を転がしながら唯のことを憂に尋ねる、という形で、立場を入れ替えつつ反復されていたり、

・ギー太を抱えて寝たために唯の顔に弦のあとがついた話が、卒業式前夜の唯と憂の会話の中で取り上げられたり、
 (どちらも唯が「梓への贈り物=天使にふれたよ!」について、あれこれ思案している場面です)

・登校中、唯が紬の手を触るシーンで強調される「紬の手が温かい」という設定が、
 卒業式の日、屋上で紬が緊張のために「すごく手が冷たいの」と漏らすシーンに対応していたり、

・澪の「(寝る時は靴下を)履かない」発言が、空港での荷物行方不明事件の時に再びネタにされたり、

・憂が冗談で提案した「留年」ネタが、ドイツの都市リューネンを経て、旅行中の梓の夢を侵食したり、

・紬の「温泉で卓球したい」発言が、二年生組の卓球シーンに間接的に結びついていたり、

・オカルト研の「屋上で宇宙と交信」発言が、卓球時の純のセリフと、三年生組の屋上シーンにつながっていたり、
 (オカルト研といえば、ロンドンでは軽音部が大英博物館へロゼッタストーンを見に行くシーンもあります)

・憂が唯の荷物に詰め込んでいた大量のインスタント和食が、寿司を食べ損ねた軽音部の晩ごはんとなったり、

・唯の母が持たせた「旅の英会話本」が、機内での唯と梓のノージャパニーズトークに生かされていたり、
 (この時の唯の「あずキャット」が後に一大流行語となることは、指摘するまでもないでしょう)

・唯の父が持たせた変圧器が、ロンドン滞在初日のホテルでのドライヤー発火事件を経て、
 野外ライブの準備のシーンで、唯にシールドの挿入をためらわせるフラグとなったり、

・紬だけが自分の楽器を持参しなかったという設定が、ロンドン初日の寿司屋での交渉シーンや、
 カネにモノを言わせてキーボードを取り寄せる最終日のエピソードに反映されていたり、
 (空港到着時に紬が熱心にメールを打っているのは、おそらく楽器を送らせる手はずを整えるためです)

・機内での「過去や未来へのメール」の話が、野外ライブ出演をためらう場面で唯によって蒸し返されたり、
 (唯の理屈を突き詰めると、野外ライブ出演、すなわち海外進出を決意するメールは、未来に向かって
  送信されていることになり、HTTの将来の展望を予感させます。ちなみに、ホテルに電話がかかってきた時に、
  唯が「日本は朝の六時」と瞬時に判断できたのは、メールの件で時差について考えていたからでしょう)

・空港のベルトコンベアーでのトラウマが、回転寿司や観覧車のシーンで澪を恐怖と不安に陥れたり、

・寿司屋でのラブクライシスとの偶然の再会が、野外ライブ出演のきっかけとなったり、



などなど。他にも、三年生組が梓への贈り物について相談していると必ず梓が現れる、という流れは、
卒業式当日の部室のシーンで紬自身が言及していますし、唯が梓にくっつこうとして梓に避けられる、という展開も、
飛行機の座席の肘掛けをめぐる二人の攻防をはじめ、随所に見られます。また、冒頭の「デスデビルごっこ」と、
「天使にふれたよ!」の関連については、別の記事で述べたとおりです。さらに言えば、ロンドン編で頻繁に出てくる
「子ども」と「鳥」という二つのモチーフは、終盤のキーワードである「天使」を導く重要な伏線となりますが、
この点については機会を改めて検討しようと思います。

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とにかく、映画の中に限っても、これだけの伏線があるわけです。さらにTV版からの伏線を加えると、
そのリストは膨大なものになります。しかし、ここで重要なのは、伏線の量そのものではなく、
これら大量の伏線が回収されていくことによって、物語がことごとく「閉じて」いくこと。
ある事象の意味が、同じ物語の中の別の箇所で解明されることで、物語全体が一つの閉鎖的な体系として
自己完結していく、ということです。そしてこの「閉じる」という運動は、伏線の整理とは異なる視点からも
観測することができます。次にこれを見ていきましょう。

先に紹介した友人とは別の友人の指摘ですが、寿司屋での演奏を除いて、映画の中でHTTが自発的に行なった
三つのライブの会場について考えると、野外から教室、そして部室と、次第に小さくなっています。
劇場版ともなれば、通常は舞台を徐々に広げることで話を盛り上げるのが定石のはずですが、「けいおん!」では
まったく逆の流れをたどっているわけです。ライブの客層を見ても、ロンドンでのイベントの来場者、
クラスメイト、梓、の順に、回を重ねるごとに内輪向けの演奏になっていることがわかります。
つまりここでも、物語は「閉じて」いる、というわけです。

さらに注目すべきは、このような舞台の縮小とは対照的に、
物語そのものは、むしろ梓への演奏の場面において最高潮を迎える、という点。
軽音部という自分たちだけの小さな世界に閉じこもっていく唯たちを、
いわば肯定するような形で話が進むわけです。「けいおん!」とは結局、
閉じた世界の楽園的な幸福を謳う、内向きの物語に過ぎないのでしょうか。

山田監督が各所で「高校生である唯たち」へのこだわりを表明している点、あるいは、
前回紹介した記事でも取り上げられている映画『エコール』について、
キネマ旬報のインタビューで山田監督自身が言及している点から察するに、
「けいおん!」にそういった閉鎖的な志向があることを、完全に否定することはできないでしょう。
確かに「けいおん!」は、高校という閉じた世界を賛美する、強い内向きのベクトルを持った作品です。
しかし、やはり決して、それだけではない。そしてその点にこそ、「けいおん!」の核心があるのです。

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脚だけで四人の心情を描き出す印象的なラストシーン。彼女たちはそこで、
大学生活への期待を、いつもの部室での会話とまったく変わらない調子で語ります。
彼女たちの屈託のない話しぶりからは、高校への未練など(澪が見せたわずかな感傷を除いて)一切うかがえません。
しかもそれは、単に「過去を振り切った」というのとは明らかに違う。なぜでしょうか。

前回の話とも重なりますが、彼女たちが高校という小さな世界にこだわっているように見えたのは、
物語の外から彼女たちを見た私たちが、勝手にそう思い込んでいただけで、彼女たち自身は、
絶えず訪れては過ぎ去っていく「今」という瞬間瞬間を、ただ懸命に駆け抜けているに過ぎません。
物語の中では、たまたま高校が彼女たちの「今」の舞台だったために、「今」に向けられた彼女たちの情熱が、
高校という特殊な閉鎖状況への愛着という、はた目には極めて内向的な形態をとって現れただけなのです。

だからこそ彼女たちは、別れを惜しむ梓やさわ子とは対照的に、ケロッと高校を卒業します。
彼女たちにとって大事なのは、高校生活ではなく、その時その時の「今」を楽しむことだから。
そして、高校を卒業した彼女たちは、次の「今」である大学生活に思いをはせます。
彼女たちは、次の「今」として現れる未来に向かって、自分自身を「開いて」いるのです。

さらに驚くべきは、その未来に梓が登場すること。唯の「あずにゃんの卒業旅行」という発言はもちろんのこと、
より比喩的な次元でも、未来における梓の存在が示唆されます。画面左を過去、右を未来に見立てると、
左から右へと走る唯たちは、過去から未来へと走っていることになりますが(こちらを参照)、
その先に梓(と和)がいるということは、唯たちにとっての未来には、梓が存在する、ということです。
高校に留まるはずの、すなわち、唯たちにとっては過去に属するはずの梓が、です。これをどう考えるべきか。

未来が「次の今」であるのと同じように、過去は「かつての今」でもあります。そしてその限りにおいて、
過去は「今」に属することになります。つまり唯たちは、未来だけではなく、過去に対しても、
自分自身を「開いて」いるのです。この時、「かつての今」としての過去と、「次の今」としての未来は、
双方に対して開かれた唯たちの「今」を媒介として、時間軸上の差異を失います。そこでは、
過去―現在―未来という分節的な時間概念が解体し、瞬間瞬間が永遠の「今」として把握されます。
「かつての今」にとってかけがえのない存在であった梓は、当然「次の今」にとってもかけがえのない存在であり、
その意味において梓は、過去でも未来でも、あるいは現在でもなく、唯たちとともに、唯たちの「今」にいるのです。
それゆえにこそ、梓は「かつての今」である高校に留まりながら、唯たちを「次の今」で待つのです。

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「今」という一点に向かって徹底的に自分を「閉じて」いくことによって、
むしろあらゆる時点に向けて自分を「開いて」いくという逆説。この逆説のおかげで、
「けいおん!」は閉じた楽園の物語に終始することを免れています。いや、それだけではありません。
この逆説的な時間原理は、青春という祝祭的時空において経験される特異な時間感覚を貫く原理であり、
ひいては青春の原動力であるといえます。つまり「けいおん!」は、徹底して「今」にこだわり抜くことで、
青春という人生の一局面における、人間の在り方の根源を描き出すことに成功しているというわけです。
このあたりに、作品としての芯の強さを感じます。

深夜のテンションで書いてたら言ってることが適当になってきたので、今回はここまで。

(※他の感想記事はこちらから→劇場版けいおん!感想まとめ)

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テーマ:映像・アニメーション - ジャンル:学問・文化・芸術

  1. 2011/12/14(水) 07:34:47|
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